第1章 ※
「…そうなのか。それは悪かった。俺の早とちりだ。」
そう言うと幸村様は彦兄ぃの側に座った。
それから彦兄ぃは正座になおり、
これまでのことを幸村様に聞かれるままに話しはじめた。
詳しいいきさつを私も一緒に聞いた。
元々彦兄ぃは反物の行商人だ。
京の反物を江戸に売りに行き、
江戸で京にない珍しい物を仕入れ、
帰り道にそれを売りながら京に戻るのだ。
京の方が高く売れそうなら京まで持ち帰ることもある。
また、道中にお得意さんを持ち、
そちらに頼まれたもの、
反物やそれ以外のものを江戸や京で
調達することもあった。
この地に寄ったのもお得意さんの注文の品物を
仕入れようと思ったからとのこと。
でも、途中で路銀をうっかり擦られてしまい
食べる物も尽き、ついに空腹で倒れてしまったとのこと。
私と出会えたのも神様仏様のお導きだ!と、
熱っぽく語った。