第1章 ※
「そうなのか。それは大変だったな。
それならしばらくこの地に留まり、
路銀が貯まるまで商売でもしたらどうだ?」
「そうは言われましても。
元手がなくては売る物を仕入れることもできませんし…」
「あやねの団子を売ったらどうだ?
あやねの団子は職人並みの味だ。
珍しい味の物もあるし。」
「え?そんな!」
「そういえばあやねの団子は昔から美味かったよな。
京の店でも出してたっけ。
そうか、それをどこかの和菓子屋、
いや、食事処等に売り込んでみるかな。」
「ひ、彦兄ぃ!そんな。無茶な。」
「頼む!京に帰る路銀分でいいんだ。
多分、うまくいけば半月もあれば…」
「…、わかったよ。でもそんなにうまくいくかな…」
私は彦兄ぃに押し切られる感じで引き受けることにした。
「最初の材料代は俺が出すから。」
「幸村様、さすがにそれはいけません。」
「じゃあ、儲けから後で返してもらえればいいから。」
「よし!じゃあ早速明日から。やるか、あやね!」
「だめよ、彦兄ぃ!まだ寝てなくちゃ。」
しかし彦兄ぃは商売ができると思うと元気が出たのか、次の日から食もすすみ3日後には完全復活、
私に団子作りを催促するのだった。