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狐薊❪信長協奏曲❫

第3章 兄弟



何の躊躇もなくサブローは小屋の扉を開ける
ぷしゅっ
気の抜けたような音を立てて白い霧が飛んだ
懐かしい夏の香りがする

「あ、殿」

探していた声がサブローを呼んだ
どうやら霧の発射主は帰蝶さんらしい
手元には虫除けスプレー
何故こんな物を…抱き合う二人を見ながら虫除けスプレーの存在について考える
…全然分からん

「そう言えば、それ…」
「…ぁ…殿の荷から勝手に…」
「ああ、なんだ。戦国時代に虫除けスプレーがあるのかと」

納得するサブローの後ろで私も小さく頷いた
なるほど
にしても、サブロー虫とか気にする人なのか
…それともあれか?お母さんが勝手に入れて…そっちの方が有り得そうだな

「この者達は何故隅に?」

恒興ちゃんの声に顔を上げる
刀の先を見ると数人の男がでかい図体を縮こまらせて身を寄せあっていた

「ああ…」

帰蝶さんいわく
虫除けスプレーから出る霧を浴びたら死ぬ、と言ったらしい
…まさに

「虫除け…」
「虫除け」

小さく呟いた言葉に被ってきたのは確認するまでもなくサブローで
何かムカついたから睨みつけておいた
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