第2章 殿
何時ものように朝起きて
何時ものように彼の部屋の前に立つ
何時ものように麩を開けて
何時もとは違った声を掛ける
「殿!いい加減起きませんか?」
すよすよと未だ夢の中のサブローの布団を剥いだ
「…………おあようございます」
寝起きで呂律が回らないのか中途半端な挨拶
大将とは大違い
「朝、食べますよね?」
私の方も中途半端な敬語
蹴飛ばすようにしてサブローを毛布から落として畳んで端に寄せる
大将の場合は寝込むことも多々あったから大抵布団は敷っぱなしだったのだけれど
至って健康体のサブローはすぐにでも布団から出るべきだ
「食べる食べる。お腹すいちゃった」
にこにこと答える彼
いや、あなたつい先日タイムスリップしてきたばっかりなんですけど?
緊張感って知ってる?
そう言いたくなったけれどそれを溜め息に変換して吐き出した