第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
#12
-すみれside-
お手洗いに行くといって席を立ったけど、
頭を冷やしたくて、わたしはお店の外に出た。
「すみれ?」
「京治…」
「どうかした?座れば?」
お店の入り口横にはベンチと灰皿があり、
京治はタバコの火を消して、
ベンチの空いてるスペースをポンポンとして、
わたしに座るように促した。
「京治…タバコ吸うの…?」
「そんなに本数は多くないけどね。
飲んでる時とかたまに吸うくらいかな。」
「付き合ってた時は吸ってなかった…」
京治と付き合っていた時は、
タバコを吸っている姿は一度も見たコトがない。
「すみれがタバコ苦手って言ってたからね。」
「え?そんなコト京治に言ったっけ…」
たしかにタバコは苦手だけど…
「すみれが初めてウチのサークルに
来た日の飲み会で言ってたんだよ。」
「そうだっけ?」
「皆で話してた中でだけどね。
でも、オレは最初からすみれのコトいいなって
思ってたから、速攻でやめたけど。」
「え⁈」
京治のストレートなことばに
思わず頬が赤くなる。
オレは表情がわかりにくいって言われるから、
好きな人にはちゃんとことばにして
伝えるようにしてるんだよって
いつも言ってたっけ…
わたしはそれに…
京治の優しさにどれだけ甘えていたのだろう…
「あの…さっき…ごめんね。」
「さっきって?」
「付き合ってたのか聞かれた時…
全部京治に言わせちゃって…
それに、別れた理由だって…」
「全部本当のコトだよ?
オレがすみれを思いやる余裕がなかっただけ。」
「そんな…‼︎」
「それより…
手を握ったコトは不問にしてくれるの?」
「あ…‼︎そうだよ‼︎なんで…⁈」
「内緒♪」
「…っ⁈」
京治がわたしの頬を撫でながら、
ジッと見つめてくるので、
わたしは何も言えなくなってしまう。
「すみれって黒尾さんと付き合ってるの?」
「え…?」
わたしが何も言えないでいると、
京治は予想外の質問をしてきた。