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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


#01
-すみれside-


まだ桜が咲き始めたばかりだけど、
新年度‼︎心機一転‼︎ということばが
まさにピッタリ…というくらい
日差しが暖かな新年度初日。


いつもと同じ満員電車も、
新卒のコだろうなぁ…と一目でわかる
真新しいスーツを身にまとったコを見ると、
わたしも年を取ったなぁ…と思ってしまうけど、
今年のわたしは、
新社会人に負けないくらい緊張していた。


今日から新しい部署に異動。
それだけならまだよかったけど、
新しい部署のチームが
岩泉さんと同じだなんて…。


嬉しくないと言ったらウソになるけど、
いろんなコトがちょっと不安…。


押し込めたはずの感情が
湧き出してしまわないだろうか…


考え事をしていても、
体はすっかり会社への道のりを覚えていて、
乗り換えもスムーズにこなし、
あっという間に会社の最寄駅へ辿り着く。


自慢もできないこの特技に
今日ばかりは感謝かな…。


深呼吸をして気持ちを切り替えようとしたのに、
少し前に見覚えのある後ろ姿を見つけてしまう。


気がつかないフリもできるけど、
今日から同じチームなんだし、
無視する方が変だよね…。
何より、話したいという気持ちが勝っていて、
早歩きになるのを止められない。


「お…おはようございますっ‼︎」


「おう。おはよ。今日からまたよろしくな。」


早速、押し込めたはずの感情が
湧き上がっているのを実感してしまい、
自分の意志の弱さにほどほど呆れてしまうけど、
岩泉さんと話せるだけで、嬉しくて仕方ない。


岩泉さんはそんなコト
微塵も思っていないんだろうけど…。


「はぁ…緊張します…」


「なんでだよ?」


「だって、挨拶とか…」


「あぁ。そんなことか。」


「そりゃ、岩泉さんはそういうの
うまいですけど…」


なんてことないと、軽く笑う岩泉さんに、
わたしは拗ねて抗議する。


わたしが人前苦手なコト知ってるくせに…


「でも、おまえ、お客さんの前だったら、
苦手でもしっかり話してただろ?」


「え…?」


「何やってんだ?エレベーター来てるぞ?」


思わず立ち止まってしまったわたしを
手招きする岩泉さんを慌てて追いかける。


そういうの…ズルい…。



岩泉さんのコトなんか、もう好きじゃない。
なんとも思ってないのに…

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