第8章 -迷子-(花巻貴大)**
「皆のトコ戻りたい?
すみれが戻りたいなら出て?
でも…オレと2人がイヤじゃないなら
国見の電話…出ないで。」
…ドキン。
花巻先輩は、
スマホを持つわたしの左手を
ギュッと握っていた。
〜♪〜♪〜♪
その間もスマホの着信は止まらない。
答えは決まってる。
わたしはドキドキしたまま、
意を決して…
ピッ!
あ…れ…?
意を決して切ろうとしたんだけど…
切ったのは花巻先輩だった。
「わりぃ。時間切れ。
つか、待てなかったわ。」
花巻先輩が笑いながら言った。
「え⁈あの…わたし…」
「はは…っ。
すみれに選択権
与えたつもりだったけどさ、
やっぱオレがもっとすみれと
一緒にいたくなっちゃったからさ。
…わりぃな。」
はにかむようにニコッとして
花巻先輩が言う。
どうしよう…
こんなの…期待しちゃうよ…。
「あ…あの!わたし…っ!」
「ん?」
「き…切ろうとしてたんです!」
思い切って花巻先輩に言って、
恥ずかしかったけど、
花巻先輩をジッと見つめた。
「マジ⁈あのさ…それって…」
…?
「オレ…期待しちゃうけど?」
……チュ。
…っ⁈
気がついたら花巻先輩に
キスをされていた。
「それは…わたしの台詞です。」
やっとの思いで出たことばは
なんとも可愛げのないことばだった。
「はは…♪
すみれの期待通りでいいと思うけど?
オレ…すみれが好き♪」
わたしはあんなに可愛げなかったのに…
花巻先輩はあの
ピンクのスーパーボールのように
キラキラしたことばをわたしにくれた。
---End---