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〜Lemon Candy Story〜

第45章 -運命-(及川徹)[後編]


-すみれside-


及川さんの第一印象は、
ナンパ男。空気読めない男。失礼な男。


いい印象なんて一つもなかった。


黒尾くんと一ノ瀬さんがいる所に
一緒に遭遇してしまった時は、
ほんっとに失礼な男だと思ったし、
青西建設の担当になってしまった時は
ほんとに憂鬱だった。


でも、引継資料を見て、この仕事をやりたい…
ほんとは少しそう思っていた。
引継資料だけでも、
及川さんとの仕事はかなり魅力的だったから。


及川さんに会うのは、
ほんとにイヤだったのだけれど。


接待の日はめちゃくちゃだし。


資料を取りに戻るはずが、
突然タクシーに乗せられて、
タクシーの中で指を絡めてきたり…
酔って寝てしまったわたしを
家に泊めてくれたけど、
ベッドの中で抱き締められたり…
ただのヘンタイじゃないかと思うのに、
無邪気な子どものように可愛いところや、
駄々っ子だったり、拗ねてみたり…
どれがほんとの及川さんなのかわからない。


でも、及川さんは、わたしの最初の印象を
どんどんひっくり返していった。


一ノ瀬さんと
鉢合わせしないようにしてくれたコト…

飲み過ぎたわたしの酔い冷ましのために
頼んでくれたオレンジジュース…

夜遅くに一人で帰らないように、
わたしに断る理由を与えずに
家に泊めてくれたコト…

patisserieHYBAの紙袋…



黒尾くんに失恋した悲しい気持ちより、
及川さんへの怒りの気持ちが
強くなっていたから、
わたしはあのパーティーで平常心でいられた。


接待の時も、及川さんが
二人と鉢合わせしないようにしてくれたから、
黒尾くんに対していつも通りでいられた。


認めたくないけど、
心の中に及川さんが溢れてきてしまう。



でも…



あのパーティーで
わたしを黒尾くんたちから遠ざけたのも、
青西建設で鉢合わせしないようにしたのも、
わたしと会ってしまったら、
一ノ瀬さんがわたしの気持ちに気付いて、
傷ついてしまうかもしれないから。


わたしが泣かずにすんだのは、及川さんが
一ノ瀬さんのために動いた結果のおまけ。



及川さんが好きなのは、一ノ瀬さんだから…



そう思うのに…




日曜日…
わたしは及川さんの家の最寄駅に
再び降り立っていた。


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