第44章 -運命-(及川徹)[中編]
落ち着かない一日をどうにか乗り越え、
わたしはようやく自分の家に帰った。
patisserieHYBAに寄るのは忘れずに。
キレイにラッピングされたお菓子の包みは、
今、わたしの目の前にあった。
灰羽さんには、友だちに…と言ったけど、
ほんとに及川さんへお詫びに渡そう…
そう思ったら、お菓子一つもなかなか選べず、
結局お店に30分も居座ってしまったのだけど…
そんなお菓子を横目に見ながら、
わたしはスマホとにらめっこをしていた。
連絡したくないけど…でも…
連絡先知ってるのに、
あんなに迷惑掛けておいて、
何も言わないのは、気が引ける…。
(色々された気もするけど…)
及川さんが言っていた
”4回デートする”っていうのは、
冗談だとしても、
ちゃんとお詫びも渡したいし…
”檜原です。お疲れさまです。
昨日はご迷惑お掛けして、
本当にすみませんでした。
お借りしたお洋服、
クリーニング終わり次第、お返しします。”
おかしな文章…ないよね…
もう一度確認してから、送信した。
ピロン♪
え…?
送信してからあまり時間を置かずに
スマホが鳴ったので、
まさかとは思ったけど、
及川さんからのLI◯E通知だった。
それだけでまた胸がドキッとしたのだけど、
そのドキッ…が、
返信が嬉しかったからだというコトには、
気付かないふりをした。
”仕事メールじゃないんだから、
そんな固い文章送らないでよー(ㆀ˘・з・˘)
服はいつでもいーけどさ。
デートはいつにしよっか?”
でも、”デート”ということばを見て、
またしても、自分の胸が高鳴ってしまう。
なんで、こんなにドキドキしてるの…?
昨日いろんなコトがあったから?
変に意識してるだけ…?
ピロン♪
わたしがテンパっていると、
また及川さんからのLI◯Eがきていた。
”今度の日曜日、会える?”
どうしよう…
ドキドキが止まらない。
でも、止まらない理由がわからない。
昨日いくら色々あったからって、
及川さんは、ただの取引先の人なのに…
”大丈夫です。”
でも、戸惑う気持ちとは裏腹に、
わたしはOKの返信を送っていた。
---End---
→to be continued
→next [後編]