第43章 -運命-(及川徹)[前編]
「オレンジジュースは、血中アルコール濃度を
低下させる機能があるんですよ。」
「え…?」
もしかして…及川さん…
わたしの酔い冷ましのために、
ココに誘ってくれた…?
わたしが断らないように、
わざと挑発するような言い方をして…。
「あいつ、一見チャラそうだし、
いつもヘラッとしてふざけてるし、
一言多いし、ムカつくし、
イケメンだし、ムカつくし…」
今…”ムカつく”って2回言った気が…。
岩泉さんといい、まっつんさんといい、
及川さんの扱い、皆こんな感じなの…?
「でも、あいつすげぇヤツだから。」
「え…?」
散々及川さんをけなしていた
まっつんさんがニッコリして言う。
「なんだかんだ周り見てるし、
すげぇいろんなコト考えてる。」
「……。」
すごいいい顔をして言うまっつんさんに
わたしは何も言えなかった。
「ま、そんなすっげぇいいヤツの
ワインだからさ!」
わたしが何も言わないからか、
急に明るく雰囲気をかえた
まっつんさんは、ニヤリとして、
わたしの前に及川さんのグラスを置いた。
「飲んじゃっていいんじゃね?」
「…‼︎はい♪」
わたしはまたワインを一口飲んだ。
「あ、でも気持ちわりぃならやめとけよ?」
「ふぁ…大丈夫です。ほわ〜っとして、
ちょっと眠かっただけなので。
でも、ほんとコレ美味しいです。
飲みやすい…♪」
「疲れてんの?」
「ん〜…ちょっとだけ。
でも、このワインに癒されました♪」
わたしはまた一口飲んで答えた。
「疲れてんならやめとけ?
また酔うぞ?」
「え〜⁉︎でも、美味しいから、あとちょっと♪」
たしかにこのワインは美味しかった。
でも、まっつんさんのことばを、
もっと真剣に聞き入れればよかった。
その前に日本酒も飲んでいたのだから…。
昨日の残業もあり、打ち合わせや
接待でも気を張っていたからか、
気持ち悪くはないけど…
むしろ、気持ちいいくらいに
眠たくなってしまい…
本当に寝てしまった。
そして、次に目が覚めた時は…
わたしは知らない場所にいた。
---End---
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