第6章 -長所-(菅原孝支)
あれ…今何時だろ…?
「ふぁ〜っ。」
とりあえず伸びをして、教室の時計を見た。
やば…もう19時…?
わたし…寝ちゃってたんだ。
学校…まだ人いるのかな…
「はぁ…。」
ガラッ…
「デッカいため息…(笑)」
…っ⁈
「菅原っ⁈」
わたしのため息と同時に、教室のドアの開く音と、菅原の声がした。
「檜原、なにしてんの?寝てたの?」
「うん…そう…みたい?」
「なんで疑問形なんだよ?」
菅原は面白そうに笑いながら、自分の机を漁っていた。
凹んで教室でふて寝してたなんて菅原には言えない。
「菅原は忘れ物?」
菅原の質問には答えず、逆に質問してみる。
「うん。数学の宿題出てたろ?
教科書忘れちゃった。」
そうはにかむ菅原の笑顔は眩しかった。
「そっか。」
「どしたん?元気ないなー。」
ドキッ…。
「そんなことないよ。」
菅原は何も知らないのに、わたしが凹んでる時とか、いつも絶妙なタイミングで声を掛けてくれる。
なんでだろ…。
「バーカ。それが”そんなことない”奴の顔か?話くらいなら聞くぞ?」
菅原はわたしの席の前に座り、わたしの顔を見てニカッとした。
「菅原ー。」
「ん?」
「わたしのいいトコってある?」
「そりゃあるだろ。」
すぐに答えてくれた菅原の反応が少し嬉しかった。
「たとえばー?」
「変なコト気にして悩んじゃうトコとか。」
「それっていいトコー?」
思わず苦笑いしてしまう。
「檜原はいつも自分を後回しにして周りのコト考えてるからなー。」
「え…?」
菅原がそんなふうに思ってくれてるなんて知らなかった。
「あとはオレにお菓子くれるトコとかーオレに肉まん奢ってくれるトコとかー。」
ん…⁈なんかおかしいぞ…?
いたずらっ子のような目をしながら、菅原は続ける。
「オレに今日の数学の宿題教えてくれるトコとかー?」
…っ⁈
「あははっ。何それー⁈」
わたしは菅原のことばに笑いが止まらなかった。凹んでたはずなのに、菅原と話してたらいつのまにか明るい気持ちになっていた。
「あとさ…」
「あはは…。まだあるのー?」