第43章 -運命-(及川徹)[前編]
-及川side-
「なんであずみも行くのさ⁈」
「なんでわたしが行ったらダメなんですかー⁉︎
及川さん、ヒドイ‼︎」
今日はNEKOMAデザインが全面バックアップで
デザインを手掛けたpatisserieHYBAの新店の
お披露目パーティー。
patisserieHYBAは、
今までは販売専門の店舗だったが、今回、
カフェとバーが併設された店舗を初出店する。
そのお披露目パーティーに、
取引先である青西建設の一部も
招待されていたのだが、ウチで行くのは
”ユニットリーダークラス以上”のはずだ。
NEKOMAデザインとは関わりたくないけど、
仕事上、行かないわけにはいかないし、
あずみも行かないから…と思ってたのに!
「おまえら、いい加減黙れ!クソ川、煩い‼︎
一ノ瀬、夜久さんと仲良いから、
夜久さんが一般枠で招待してくれたんだよ。」
「なんだ、
黒尾くんに招待してもらえなかったの?
もしかして、フラれちゃった?」
そんなコトあるわけないのは百も承知だが、
オレはわざと憎まれ口であずみに話し掛ける。
「フ…フラれてません‼︎てつ…黒尾さんには、
行くコト、内緒にしてるんです‼︎」
あずみに告白…じゃなくて、
独り言を聞かせた後、あずみから、
黒尾くんと付き合うコトになった…
と、報告を受けていた。
別にそんなの聞きたくなかったけど、
それからもあずみとは、
今まで通りに接していたし、
あずみも今までと何ら変わらず
オレと接していた。
今まで通り…とはいえ、
オレの心はまだちょっと痛いけど。
久しぶりに
自分から追い掛けたくなってしまったから、
フラれた時…じゃなかった、
追い掛けた相手に恋人ができてしまった時、
どうやって気持ちに整理をつけたらいいのか、
よくわからなかった。
「patisserieHYBAが出す
新しいコーヒーも楽しみですよね♪」
「あぁ。
絶対シュークリームに合うヤツだよな!」
マッキーと盛り上がっているあずみは、
やっぱり可愛いし、
やっぱりオレのものにしたかった…
そう思っている自分にビックリしてしまう。
自分がこんなに未練がましい男だなんて、
オレは知らなかった。