第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
-すみれside-
今日は…ドキドキした1日だったなぁ…。
また会えたらって、少し期待していたけど、
まさか本当に会えるなんて…。
「すみれっ♪今帰り?」
「及川さん…!」
打ち合わせのあと、少し残業して、
エレベーター前でスマホを見ながら、
今日のコトを思い出していると、
エレベーターホールに及川さんが来た。
「お疲れさまです。
及川さんも今帰りなんですね。」
「うん。
黒尾くんと話が盛り上がっちゃってさ♪」
「え…?」
黒尾さんと⁈
「ね、ほんとに
黒尾くんとはどういう知り合いなの?」
何を話したのか聞こうと思ったのに、
及川さんに先に質問されてしまった。
「え?別にそんな言うほどのことでは…
あ!エレベーター、もう来ますよ。」
あのカフェでの出会いを及川さんに話すのは、
なんとなく恥ずかしい。
わたしは誤魔化すように話し続けた。
「今日はお天気良かったから、
”ご褒美”もきっとキレイですよ♪」
都心の高層ビルの上層階にあるウチの会社…
エレベーターは外が見えるようになっている。
「…そうだね。」
及川さんはなぜかため息をついていた。
「お疲れですか?」
最近、忙しそうだし、
さすがの及川さんも疲れてるのかな…。
「すみれが癒してくれる?」
「も〜‼︎ほんとに心配してたのにー。」
及川さんはほんとに謎。
チャラそうで仕事も適当っぽいのに、
仕事はいつも完璧。
見てないようで何でもお見通しだし…。
ポーン♪
「ほら、エレベーター来たよ。」
「あ…」
後輩のわたしが先に乗って、
ドアを開けておくべきなのに、
及川さんはサッとエレベーターに乗り込み、
ドアを開けておいてくれる。
「たしかに今日は”ご褒美”がキレイだね。」
フロアからもこの夜景は見えるが、
ちょうどいい位置にあるのもあって、
エレベーターからの夜景は格別だった。
「わたし、残業で疲れてても、
及川さんが”ご褒美”って教えてくれたから、
それがすごい支えになってるんです♪」
この夜景を”ご褒美”だと言ってくれたのは、
他でもない及川さんだった。
「そんなことばじゃなくて、
オレがすみれの支えになるのに…」
「及川さ……⁈⁈」