第42章 -運命-(黒尾鉄朗)

「ステキな檜原さんまで、
及川さんの毒牙にやられてたら
ヤダなぁって思ってたから、
ホッとしただけっすよ？」


黒尾さんはそう言うと、
カフェラテに手を伸ばした。


そ…そうだよね…。
ちょっと運命的な感じで(わたし的に)
再会したからって…意識し過ぎだよね…


「毒牙ってヒドイなー。黒尾くんだって
なんだかんだモテるクセに。」


「ま、否定はしないけど(笑)」


やっぱり黒尾さんてモテるんだ…


「ま、及川さんには及ばないけどねー♪」


「それはどーっすかねー？」


あ…あれ…？
なんだかだんだん二人のモテ自慢というか…
ただの子どものケンカを聞かされてるような…


「あの…」


「「なに？」」


子どものような二人が同時に返事をして、
二人でジッとわたしを見つめてきた。


う…っ…イケメン二人に見つめられると、
こっちの身が持たない…。


わたしもカフェラテを一口飲み、
二人から一度視線を外して、心を整えた。


「及川さんの今のプロジェクトで
黒尾さんにお世話になってるのは
わかったんですけど、お二人は
プライベートでも仲良いんですか？」


さっきからやたら親しげだし、
昔から知ってる…とか？


「いや、この人どんどんふざけるからさ。
敬語抜けてきちゃうんだよね。」


「敬語抜けたの黒尾くんのが先だったよ！」


「いや、絶対及川さんだから！」


って、わたしの淡い期待を
打ち消すかのような、
結局、さっきの続き⁈
子どもみたいなケンカが復活してしまった。


「ふふ…とりあえずお二人が仲が良いのは、
よーくわかりました(笑)」


「「えっ⁈」」


「あ、わたし、これから打ち合わせなんです。
黒尾さん、この間はほんとに失礼しました。」


「いや、だから、ほんと気にすんなって。」


「え⁈すみれ、”この間”って何⁈
どういうコト⁈」


「及川さんには関係ありませーん(笑)
じゃあ、黒尾さん、
美味しい飲み物に癒されてくださいね。」


わたしは荷物をまとめて、
黒尾さんに挨拶してから、席を立った。



本当はもっと
黒尾さんと一緒にいたかったけど…。



わたしは後ろ髪を引かれながら、
カフェを後にした。