第5章 -嫉妬-(澤村大地)
「なんかね、芸能人みたいに
キレイな顔しててね、
思わず鏡越しにジッと見て
観察しちゃったよ(笑)」
……。
今日あったコトの1つとして
すみれは何気なく言うが、
オレにとっては面白くもなんともない。
「で?」
モヤモヤと渦巻く
嫉妬のような気持ちをおさえ、
やっと出た言葉は、
たったの1文字だった。
「え?んと…それだけ(笑)」
すみれは不思議そうにして、
ふにゃりと笑い、微笑んだ。
「ふーん。」
「あ、ゴメンね。
特にオチとかはないの。」
すみれは慌てるが、
別にオレは
オチを期待してたわけではない。
…………。
「大地?」
オレが黙っていると、
すみれが少し心配そうに
オレの顔を見上げていた。
「なに?」
ついそっけなくこたえてしまう。
「どうしたの?」
「別に。」
「でも、急に黙っちゃうから…。」
すみれは淋しそうに
シュンとしていたが、
オレはすみれと
話す気になれなかった。
「そんなことないよ。
テレビでも見る?」
テレビを付けたが、
テレビなんか見ていない。
ほんとはすみれと話したいコトが
たくさんあったし、
久しぶりに2人でイチャイチャしたい。
でも…
オレはただ黙っているだけだった。
「…大地?」
暫くして困惑して泣きそうなすみれが、
またオレを呼んだ。
……。
………。
…………。
「はぁ………。悪かったって。」