第5章 -嫉妬-(澤村大地)
ピンポーン♪カチャン…
お!来たなー。
ガチャガチャ…
オレが出ていないのに、
勝手にドアの開く音がする。
でも、誰だかわかっていたので、
オレは慌てない。
読み途中の雑誌を
マガジンラックに閉まった。
「大地、いる〜?」
「おう♪いるよ〜。」
バタバタ…
勝手に鍵を開けて入ってきたのは、
合鍵を持ってるオレの彼女のすみれ。
だから、オレは慌てない。
すみれは鍵を持っているのに、
いつも先にインターフォンを鳴らす。
「突然鍵が開く音がしたら、
ビックリするでしょ?」
というのが、彼女の持論だった。
大学で入ったバレーサークルで
出会ったすみれと付き合って
もうすぐ1年。
ビックリするしないではなく、
インターフォンと鍵の開く音は、
いつのまにかオレにとって、
すみれが来たという
合図になっていた。
「お土産買ってきたよー!
ケーキ食べよっ♪」
「おう。ありがとな。…‼︎
すみれ、前髪切った?」
前髪だけではなく、全体的に
少し短く切ったようだったが、
1番変わったのが前髪で、
横に流していた長めの前髪が短くなり、
前におろしていた。
「うん。前髪だけじゃないよー。」
少し恥ずかしそうにすみれが言う。
「ははっ。わかってるけど♪」
照れながら前髪を押さえるすみれが
可愛らしかった。
「…変?やっぱり似合わないかな?」
お土産のケーキを
冷蔵庫に入れたすみれは、
オレの横に座り、
ジッとオレの顔を覗き込んできた。
「 変じゃないよ。かわいいかわいい。」
すみれの頭を撫でると、
ニコッと嬉しそうにしたあと、
すみれはやっぱりまた照れていた。
「でも、やっぱり…
少し短すぎた気がする…。」
「見慣れてないだけだよ。」
そう言いながら、
前髪だけで変わるもんだなぁ…と、
オレも思っていた。
出会った頃からすみれは、
前髪は横に流していたので、
前髪をおろしているのを見るのは、
初めてだった。
「そういえば、美容師さんは
いつもの人だったんだけどね、
アシスタントの人が新しい人で、
すごいイケメンだったの‼︎」
「は⁈」
……なんだそれ⁈