第34章 -強引-(黒尾鉄朗)
「あれ?黒尾?どうした?」
今日は花火大会。
バレー部の連中との集合場所に行くと、まるで来てはいけなかったかのように海に言われる。
「あ?なんだよ?オレが来たらまずかったか?」
「まずいっていうか…いいのか?」
海は何ともいえない表情で、オレから目をそらす。
「は⁈黒尾⁈なんでいるんだよ⁈」
「なに?やっくんまで…オレを除け者にすんの?2人してオレに冷たくねーか?」
海の次はやっくんかよ?
オレは少しだけ2人に抗議する。
「いいのか?檜原は…」
気まずそうに海が言う。
「は⁈なんですみれが出てくんだよ?」
すみれは研磨とオレの家の間に住んでる幼なじみ。
正直幼なじみの枠を越えられずモヤモヤしてる今日この頃だが…絶賛喧嘩中。
「だって、おまえ…今日…」
「今日?別にすみれとは何も約束してねーよ。
つぅか、ちょっと前からなんか機嫌悪くて喧嘩してるしよ。」
「「はぁ⁈」」
数日前からすみれは機嫌が悪かった。
何か言いたそうなのに、何も言わない。
なのに、オレが話し掛けると一瞬嬉しそうな顔をするのに、オレが話し始めると、途端に機嫌が悪くなった。
「そりゃ、黒尾…おまえが悪い。」
「黒尾…さすがにオレでもそれは…」
「はぁ⁈なんなんだよ、おまえら?」
なぜか2人に攻められまくり、さすがのオレも少し腹が立ってくる。
「”花火大会”と”誕生日”」
ため息をつきながら、よくわからないキーワードを海が呟いた。
花火大会と…誕生日…?
「…あ‼︎」
1年の時は1週間後くらいに思い出した。
2年の時は3日後くらいに思い出した。
この時期いつも機嫌が悪くなるすみれ。
男バレと女バレメンバー何人かで話していた時に今年はたまたま男バレも女バレも午前練だけだから、花火大会行けるなぁ…という話題になり、さすがのオレもすみれの誕生日を思い出した。すみれの誕生日は毎年音駒川の花火大会の日だ。
つぅか、そんな覚えやすい日なのに、なんで、オレ毎年忘れるんだよ…。
『すみれ?』
『なぁに?』
『今年は一緒に行くか?』
『え?』
『三度目の正直(笑)誕生日だろ?』
『うんっ!』