第31章 -冷静-(赤葦京治)
-すみれside-
「意外と可愛いかも♪」
音駒のちえりと色違いで買った水着を
家に帰ってきて、さっそく着てみる。
今日は音駒のバレー部が、
体育館点検で部活が休みだったらしく、
放課後、ちえりに呼び出された。
”水着を一緒に選んでほしい”…と。
わたしは帰宅部だけど、
幼なじみの京治の
バレーを見るのは好きで、
よく応援に行ったり、
合同練習だけ手伝ったコトもあり、
音駒の皆さんとは、
顔を合わせるコトが多く、
ちえりとはすぐに仲良くなった。
だから、ちえりと黒尾さんの
付き合った経緯まで全部把握している。
そんなちえりが
黒尾さんをビックリさせたくて、
新しい水着を買いに行くのに
付き合っただけだったのに、
わたしまで買ってしまった。
試着してるちえりを待ってる間に、
”お客さまも試着だけでもいかがですか?”
と、店員さんに言われて、
試着したのが間違いだった。
”すみれ、可愛い♡”
”オソロイにしようよ♡”
”音駒と梟谷の皆で海に行こう♡”
”赤葦くん、絶対喜ぶよ♡”
そんなちえりのことばに
まんまと乗せられてしまったから。
水着自体は可愛い。
あの京治が喜ぶとは思えないけど…
そもそも、わたしと京治は
付き合ってるわけでもないのに、
わたしの水着姿を喜ぶとか…
一緒に海に行くって、
決まったわけでもないのに…。
うぅ…それにしても、
おなかが気になるなぁ…
ちえり、細いしなぁ…。
「あと3kgは痩せな…」
トントン…「すみれ、入るぞ?」
「え…?」ガチャ…
「………⁈」
「きゃあっ…」
ノックと同時にドアを開けた京治が
突然部屋に入ってきて、
わたしは思わず叫んでしまったが、
当の本人はいたって冷静だった。
「何してるの?」
「な…何って…水着…買って…」
「へぇ。」
チラリとわたしを見る京治…
わたしは恥ずかしくて、
脱いだ制服のブラウスで、
身体を隠した。
「あ…あのねぇ⁈ノックして、
返事聞いてから入ってきてよ!」
「あぁ…悪い。」
「もう…何しに来たの?」