第4章 -夢中-(花巻貴大)*
「ねーねーまっつん、お願い!
おねがーーい!」
「……。」
「花。クソ川のヤロー、
なんでやたら松にかまうんだ?」
部活終わりの帰り道。
お決まりのメンバーで歩いていたが、
やたら松にからむ及川を見て、
岩がオレに聞いてきた。
「あー。松の彼女紹介しろって。」
「まだやってんのか?」
「マッキー!違うって!
”凛ちゃんのお友達”を紹介してって
お願いしてたんだよ!!」
「うるせーぞ。クソ川。」
「ひどい!オレは岩ちゃんの
ためにもなると思って
まっつんにお願いしてるのに!」
「…っ‼︎」
「痛い!痛いってば岩ちゃん‼︎」
及川に岩の鉄拳が飛ぶ。
「つぅか、なんで名前知ってんだよ?」
「え?こないだまっつん達と
会ったときに聞いたんだよ☆」
「…。」
松の質問に及川は安定の
☆マークを付けてことも投げに言う。
事の発端は
今週の月曜日の部活オフの日。
家に帰ったあと出かけた及川が、
松と彼女のデートに遭遇したらしい。
松にとっては災難でしかない。
松に彼女がいるのは、
皆知っていたが、
誰も会ったコトがなかったし、
見たコトもなかった。
写メは…撮りそうもないしな。
見せねーだけか。
誰も見たコトのない”松の彼女”
それを初めて見たのが
よりによって及川。
及川曰く
「まっつんにはもったいない美人!」
らしく、
次の日から松にからみつづけ、
今日で4日目。
紹介なんかしてもらわなくても、
及川は女に困らないだろうに…。
「じゃーな、岩。」
「岩、おつかれー」
「おう。」
「ちょっと2人とも!オレは⁈」
叫ぶ及川は無視して岩と別れ、
松と2人になる。
「及川、今回はねばるな(笑)」
「あぁ。」
オレが松に言うと、
ため息をつきながら、松が返事をする。
「でも、そんなに美人なら、
オレも1回くらい見たいんだけど(笑)」
「そういうのは及川だけで十分だよ。」
「ハハッ。」
「あ…でも…」
「なんだよ?」
しばらく考えてから松が言う。
「花、会ってみねーか?」
「は?」
「オレの彼女じゃなくて、
彼女の友だちな。
誰か紹介してくれって
言われてんだよ。」
突然の松の申し出にオレは少し驚いた。
「なんでオレ⁈」