第26章 -残業-(黒尾/岩泉/花巻)
「黒尾くん⁈」
この状況が理解できない。
なんで黒尾くん…抱き締めて…⁈
「一人暮らしの理由が後者でよかった。」
後者って…”彼氏と別れたから”…⁇
黒尾くんはわたしを抱き締める力を
緩めてくれなかった。
むしろどんどん力が強くなっていく。
「あのさ…お礼…」
「…?」
黒尾くんは、わたしの肩を持ったまま、
わたしの顔を覗き込んできた。
「キスがいい。」
「…⁈えぇっ⁈あの…っ⁈
な…何言ってるの⁈
あ…あのねぇ⁈黒尾くん⁈
言ったよね?
わたし、彼氏にフラれたって…」
わたしはビックリしすぎて、
黒尾くんから離れようとしたけど、
黒尾くんははなしてくれない。
それどころか、黒尾くんは、
どんどんわたしに顔を近づけてくる。
「失恋を癒すのは…新しい恋じゃね?」
「あの…くろ…っ…」
「キスからはじまる恋…なんつって♪」
…チュ。
「オレ…ずっと…」
唇に触れるだけのキス…
唇をはなした黒尾くんは、
ジッとわたしを見ていたが、
少し頬を赤らめ、
そっぽ向きながらことばを続けた。
「あ〜なんつぅか…その…
入社した時から好き…だったんだよ。」
「…⁈ウ…ソ…?」
「ほんとほんと♪
こんなコトまでしといて、
今更ウソなわけねーだろ?」
「あ…あのね…わたし…」
元彼のことばが思い出される。
”オマエはオレを見ていない”
フラれて当然だった…
だって、わたしは…
「わたしも…黒尾くんが好き!」
「すみれっ‼︎」
黒尾くんはもう一度、
わたしを抱き締めてくれた。
暫くそのまま、
黒尾くんははなしてくれない。
「ねぇ?黒尾くん?」
「あ?なんだ?」
「さっきから敬語…
ちょいちょい抜けてるよね?
それに呼び捨ても…」
「え?なんで?いーじゃん。」
黒尾くんはニヤッとして、
わたしの顔を覗き込んできた。
「ダ…ダメだよ‼︎
会社ではちゃんとして‼︎」
「えーーー?でもさ…♪」
グイッとわたしの耳元に
黒尾くんは唇を寄せた。
「今なら誰もいねーし…
誰にもバレねーよ♪」
…チュ。
黒尾くんはまたわたしにキスをした。
噂好きな会社で…
バレずにいられるのかな…
---End---