第25章 -魅力-(及川徹)
岩泉くんが”ちー”と呼ぶからか、
徹はちかちゃんのコトを
たまに”ちーちゃん”と呼ぶ。
でも、岩泉くんは
それが気に入らないらしく、
いつも徹に文句を言う。
「いーじゃーん‼︎
岩ちゃんだってすみれのコト、
呼び捨てだしー‼︎」
「…っ⁈それとこれとは…」
「それより‼︎すみれはプールはダメ!
水着持っててもダメ‼︎」
岩泉くんの抗議を
華麗にスルーした徹は、
また話を元に戻したが、
ちかちゃんが冷静に事実を伝える。
「でも、来週から
体育の授業、プールだよ?」
「えぇ⁈何それ聞いてない‼︎」
「先週の授業の時、言ってたぞ?」
岩泉くんにも言われ、
徹の顔はみるみる青くなっていった。
「はぁ…」
わたしは思わずため息をついてしまう。
「徹?毎年言うけどさ…」
「あーもーどーしよー‼︎
すみれの水着姿をマッキーとか
エロいヤロー共に見られるなんて、
耐えられない‼︎」
わたしの言葉を徹が遮るので、
なかなか喋ることができない。
「及川、相変わらずだね〜。」
「クソ川‼︎うっせぇ‼︎
仕方ねぇだろーが‼︎
(まぁ、気持ちはわかるが…。
こっちはちーが水泳部なんだから、
四六時中気になってんだっつーの!)」
ちかちゃんは呆れていて、
岩泉くんは呆れながらも、
どこか徹の理不尽な意見に
納得しているような感じだった。
「すみれ‼︎
今年こそプールは見学だからね‼︎」
「ムリに決まってるでしょーー⁈
もう‼︎付き合う前は、
こんなヤキモチ妬きの
困ったちゃんだなんて思ってなかったよ〜。」
わたしが思わずはぁっとため息をつくと、
ちかちゃんと岩泉くんが
ビックリしたようにわたしの方を見てきた。
「どうしたの?」
「すみれ、おまえ気付いてなかったのか?」
「やっぱり気付いてなかったんだねぇ。」
「ちょっ⁈何、2人とも…」
「クソ川のヤツ、入部した頃から、
オレらへの圧力すごかったぞ?」
「え⁇」
「そうそう‼︎
付き合うコトになったらなったで、
独占欲スゴイしね〜。」
「あ〜もう‼︎誰もすみれのコト、
見なきゃいーのにーー‼︎」
さすがにあれはちょっと困るけど…
ちょっとだけ嬉しい…かも。
---End---