第25章 -魅力-(及川徹)
-高1…夏-
「きゃーーー‼︎及川くーーん‼︎」
体育館に入ると、
今日も女のコがいっぱい見にきていた。
及川くんは
その女のコたちに笑顔で手を振り返す。
「体育館もそろそろ暑くなってきてるから、皆ちゃんと水分取ってね♪
ムリしちゃダメだよ?」
そこで及川くんがウインクをすると、
また女のコたちにキャーッと騒がれる。
4月に入部して早3ヶ月。
すっかり見慣れてしまったこの光景。
いつものコトだ…。
先輩たちも呆れてはいるけど、
及川くんの実力をわかっているからか、
特に何も言わない。
でも、だいたいこの辺りで…
「おい‼︎クソ川‼︎準備手伝え‼︎」
「いったーい‼︎岩ちゃん!暴力反対‼︎」
及川くんは岩泉くんに殴られる。
それもいつものコト。
先輩たちも岩泉くんがいるから、
何も言わないのかもしれない。
「すみれちゃん、
今日アップ終わったら、紅白戦やるんだって。
ビブス早めに用意しといてくれるかな?」
「あ、うん!」
「よろしくね。」
及川くんは笑顔で
わたしに声を掛けてくれるけど、
他のコに見せる笑顔と
わたしに見せる笑顔は何か違う。
わたしにだけ…そっけない。
それも…いつものコト。
うまく言えないけど、
わたしにだけよそよそしいというか…。
「すみれ〜!突き指したぁ‼︎」
アップが始まって、
わたしがビブスを準備していると、
大きな声で花巻くんが
指を押さえてやって来た。
「はいはい。
も〜。オーバーだなぁ。」
「へへっ♪
でもさ、すみれのテーピングって、
キツすぎないし、違和感なくていいんだよな♪」
「ありがと♪で、どの指?」
「ん?ココ…人差し指…」
花巻くんの手を取り、
ゆっくり丁寧にテーピングを巻いていく。
「マッキー?もう始まるよ?」
花巻くんのテーピングをしていると、
及川くんが声を掛けてきた。
「すみれ〜!
コールドスプレーあるか?」
そのすぐ後ろから、
今度は岩泉くんまで足首を回しながら、
こちらへ来た。
「えぇ⁈岩泉くんまで⁈
皆、アップ中にどんだけ怪我してるの?
あ!花巻くんのはコレで終わりね。
岩泉くん!どのへん?」
花巻くんから離れ、
今度は岩泉くんに掛け寄る。