第24章 -身長-(夜久衞輔)
そして、わたしに近づいてきたかと思うと、
イヤマフをカポッと少し持ち上げて、
わたしの耳元で…
「すみれが好きだ‼︎」
たしかに夜久くんは…今そう言った。
う…うそ…⁉︎今…好きって…⁈
わたしのイヤマフはまた元の位置に
戻されていた。
目の前の夜久くんを思わず見つめると、
夜久くんは少し赤くなって、
クルリとわたしに背を向けてしまった。
「もっと…ちゃんと
言うつもりだったんだけど…」
「わ…わたしも好き‼︎」
わたしは気持ちが抑えられず、
夜久くんの背中にギュッと抱きついた。
「すみれ…‼︎」
夜久くんはクルリと
わたしのほうに向き直り、
力強くギューッと抱き締めてくれた。
「さっきさ…黒尾が
オマエのイヤマフ外してんの見て…」
そう言うと、夜久くんは、
わたしのイヤマフを外して、
またわたしを抱き締めてくれた。
「なんか気持ちがモヤモヤして…
イヤだった。なんつぅか…
身長的にもさ…お似合いだったし…」
「え…?」
思わず夜久くんを見上げてしまった。
「別に身長でオマエのコト、
好きになったわけじゃねーけど、
やっぱり…黒尾デカいし…」
少し赤くなりながら、夜久くんが言う。
「クロは…大きすぎて、
ちょっと怖いくらいだよ。」
「…⁇」
「クロにイヤマフ外されて、
ビックリして怖かったし…。
わたしは…夜久くんがいい。
夜久くんがいいのっ‼︎」
少し恥ずかしくなってしまい、
わたしは夜久くんにギュッとして、
赤くなった顔を隠した。
「オレも…すみれがいい…。」
そう言って夜久くんは、
またわたしをギュッと抱き締めてくれた。
でも、それは部室の中だったわけで…
部室の外から皆に見られていたコトを、
この時のわたしたちは知る由もなかった。
”怒った夜久は怖い”
もちろん夜久くんはその後…
覗き見していた皆のコトを怒っていた。
でもね、
わたしには全然怖くないよ。
これからはわたしも素直になろう。
夜久くん、大好き‼︎
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