第1章 -勉強-(月島蛍)
「それにしても…
まさか蛍がこんな点数取るとは…。」
年下の幼なじみの蛍の部屋で、
蛍の全国模試の結果を見る。
総合評価はB評価だけど、
国語がC…その中でも古典だけ、
D評価だった。
「今回ヤマが外れただけなのに。
親が2人して焦るから…」
そう。
模試の結果を見てビックリした
蛍のご両親が、
文学部のわたしに
家庭教師をお願いしてきたのが、
今わたしがここにいる理由だった。
「彼女のコトでも考えて、
集中してなかったんじゃないの?」
「………ボクに
彼女いないの知ってるデショ?」
わたしがからかうと、
蛍が拗ねたように言う。
「最近の蛍のコトは知らないもん。
蛍、モテるのにね?」
「…別に。」
この手の話になると、
蛍はいつもぷすっと拗ねたように
そっぽ向いてしまう。
「そういう自分はどうなの?
彼氏できたワケ?」
「えっ⁈」
突然の蛍のジャブに
思わず固まってしまった。
「わたしは…その…」
さっきまでそっぽ向いてたのに、
蛍がじーっと見つめてくる。
「ほら‼︎古典するんでしょ⁈
勉強始めるよ!」
わたしは慌てて蛍の教科書を出し、
強制的に勉強を開始した。
古典文法からはじめて、
文章問題に入る。
「わからないコトがあったら、
なんでも聞いてね?」
「うん。」
でも、蛍は相変わらず覚えが良く、
ほとんど間違えない。
特に質問もなく、
たまに蛍が間違えた所を
わたしが教えていく。
「ちょっと休憩しよっか?」
問題集を2章分解き終わり、
蛍に声を掛け、
わたしはん〜っと伸びをした。
「……っ⁈」
「どうしたの?」
急に蛍が赤くなった。
「…別に。」
「…?変な蛍…。」
大人っぽくても、
やっぱり子どもだなぁ…って、
思わずクスッと笑ってしまった。
「…っ。…ねぇ?」
「ん?」
「わからないコトあったら、
なんでも聞いていいんデショ?」
ジッとわたしの目を見つめて
蛍が言う。
「うん。
何かわからないトコあった?」
「すみれはキスしたコトある?」
「な…っ⁈蛍っ⁈」
わたしは蛍の質問に
真っ赤になってしまった。
蛍がグッと顔を近づけてくる。
「キスのしかた…教えてよ?」