第3章 -咆哮-(鎌先靖志)
「あ♪二口、二口〜♪」
昼休みの食堂…。
二口を呼ぶすみれの声がする。
「なんすか、すみれさん?」
「あのね、見て見て‼︎
コレ買ったの‼︎新商品の○○グミ!」
オレは茂庭と笹谷と、
少し離れた席にいたが、
すみれのよく通る大きな声は、
オレ達の席まではっきり聞こえてきた。
「あー!レモン味じゃないっスか‼︎
コレ、あんま売ってないっスよね⁈」
「わたしも昨日偶然見つけたの!
二口にもあげようと思って〜♪」
「マジっすか⁈
すみれさん、今日優しーっ♪」
「すみれさんは
いつも優しいでしょうが!」
「そうでしたっけ〜?
んじゃ、いただきまぁす♪うめぇ!」
「美味しいでしょ〜?」
「はいっ。コレ、ハマりますね!」
「二口くん♡今…グミ食べたよね?
美味しかったよね?」
「はい…あ、オレそろそろ…」
(やべっ…このパターンは…)
「今日ね、
新しいドリンクサーバーが届くの。
皆のために3つも届くの!3つも!
しかも、今日、
舞ちゃん風邪でお休みなのっ。
マネージャーのか弱い女のコが
3つも持つの…大変だなぁ…」
少し離れた席にいるオレらにも
すみれの意図は明白だった。
茂庭は感心したように
すみれのほうを見ていた。
「それは大変っスね〜。」
「お…二口、すみれをかわすか?」
笹谷がニヤつきながら実況する。
「大変だなぁ…」
そこですみれのトドメの上目遣い…。
すみれは無意識でたまにコレをやるが、
この距離から見ていても、
すみれの上目遣いの破壊力はスゴい。
「…っ⁈はぁ…わかりましたー。
わかりましたよっ!
放課後っすよね?」
「ほんとに⁈いいのっ⁈やった!
ありがと!さ〜っすが二口〜♪♪」
案の定、二口はすみれに負け、
ドリンクサーバーを運ぶことを
承諾させられていた。
「あ♪檜原ちゃんだ♪」
「やっぱカワイイよな〜。」
他のクラスの奴らが
すみれのほうをチラチラ見ていた。
「でも、二口と付き合ってんだろ?」
「マジか⁈まぁ、美男美女だよな。
檜原ちゃんも
やっぱりイケメンにいくかー。」
…っ⁈
あいつら…付き合ってたのか⁈