第17章 -間接-(灰羽リエーフ)
「あれー?すみれーー!
すみれも今帰りー?
オレもオレもーー‼︎」
友だちとおしゃべりしたあとに
図書室に寄ったら、先生に捕まり、
帰りが遅くなってしまった。
1人で校門を出たトコロで、
わたしを呼ぶ大きな声がした。
その大きな声に振り向くと、
すごい勢いで
リエーフが駆け寄ってきた。
まるで大きなロシア犬のよう。
あ、でも、名前の意味は獅子だっけ?
なぜだか入学してすぐに懐かれた…
この犬だか獅子のリエーフくんは、
なんだかんだ可愛かった。
「お疲れー。…って、リエーフ、
ぜんぜん疲れてないでしょ?
元気だねぇ。」
「めちゃくちゃ疲れてるってーー。
今日も夜久さんのレシーブ特訓、
ハードだったんだからーー。」
「ふふ…今日も頑張ったんだね。」
噂の夜久さんは、少し後ろを
バレー部の皆と一緒に歩いていた。
というより、リエーフが、
その集団から抜けてきたのだろう。
「すみれー!寒いーー!」
ちょっとほんわかした気持ちになり、
せっかくリエーフを褒めたのに、
自由人なリエーフは
わたしのことばを無視して、
わたしの腕にギュッと擦り寄ってきた。
「ちょっ…リエーフ!くっつきすぎー。」
たしかに最近は、
夜はだいぶ冷えるようになってきた。
だからって、これはくっつきすぎ…。
わたしはリエーフを突きはなした。
「いてっ…すみれ、ひどーい!」
リエーフはおおげさな泣きまねをする。
「汗かいて暑いからって、
汗ひいても上着着なかったんでしょ?」
「げ…すみれ、なんでわかるんだよー?」
いや…簡単に想像つきますから…。
そろそろリエーフの相手も疲れてきたなぁ。
わたしはなんとなく、
バッグからリップクリームを取り出し、
唇に塗った。
「すみれー!それなに?それなに?」
「え?…リップクリーム…」
「オレもしたい‼︎」
「えぇぇ⁈」
このワンちゃんは
何を言っているのでしょうか?
リップクリームを…
百歩譲って女のコならまだしも…
男のコに貸すなんてありえない…。
「いーじゃん!
オレも唇カサカサするー!」
「もう…。じゃ、コンビニで買ってきたら?」
「やだー!すみれのがいいー!」