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〜Lemon Candy Story〜

第16章 -背中-(岩泉一)


ため息をついて
怒っていると思っていたのに、
はじめちゃんは今度は、
わたしに背中を向けてしゃがんだ。


「ほら!」


「え…?」


「…おんぶしてやるっつってんだよ‼︎」


「えっ⁈ムリ‼︎」


「なんでだよ⁈」


「お…重いもん‼︎」


はじめちゃんに…
好きな人におんぶしてもらうなんて…
嬉しいけど、恥ずかしすぎる‼︎


「はぁ⁈
じゃあ、お姫様抱っことおんぶ、
どっちがいいんだよ⁈」


「おんぶ‼︎」


「じゃ、決まり!
つぅか、痛いんだろ⁈早くしろ!」


思わず即答したわたしに
はじめちゃんは、
もう選択権を与えてくれなかった。


「むぅ…。なんでその二択なのよ?」


観念したわたしは、
意を決してはじめちゃんの背中に乗る。


小さい頃からいつも追いかけていた
はじめちゃんの背中は、
大きくてあったかかった。


「この二択なら、おんぶ取るだろ?
つーか、さすがにお姫様抱っこは、
オレも恥ずかしいわ。」


笑いながら、ヨッと言って、
はじめちゃんは、
わたしをおんぶする態勢を整えた。


「はじめちゃんが言ったくせにー!
重いからおりろって言っても、
もうおりないんだからー。」


恥ずかしいのと嬉しいのを
ごまかしたくて、
つい拗ねたように言ってしまう。


「いーよ、別に。そのまま乗っとけ。」


「え…?」


「せっかくクソ川いねーんだし。
少しはデートっぽいことさせろ。」


…っ⁈⁈


「はじめちゃんも…
デートだって思ってたの?」


「…っ⁈
”も”…って…おまえもか?」


「う…ん。」


はじめちゃんの背中でよかった。
わたしは今真っ赤だ。
こんな真っ赤な顔見せられない。


でも、きっと…
はじめちゃんもわたしと同じ。


わたしをおんぶして歩いてくれてる
はじめちゃんも、
わたしと同じくらい真っ赤なはず。



…耳も真っ赤だもん。



「はじめちゃん、ありがと。
………大好き!」



わたしははじめちゃんに
おんぶされたまま
はじめちゃんの背中にぎゅーっとした。




---End---


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