第15章 -味見-(花巻貴大)
「すみれってさぁ、
キスしたコトあるのかなぁ?」
「はぁ⁈」
自主練で遅くなったオレらは、
マネージャーのすみれを待っていた。
マネージャーの仕事で遅くなる時は、
危ないからオレらがいつも送っていく。
ま、オレは一緒に帰りたいだけだし、
オレ1人でいーんだけど。
で、すみれを待っている間に、
及川がとんでもないコトを言い出した。
「だってさ、すみれの唇って
なんかプルプルしてるし、美味しそう♡」
「うっせーぞ、クソ川。ヘンタイかよ。」
「つぅか、なんで急に
そんなこと言うんだよ?」
安定の岩泉のツッコミと、
冷静な松のツッコミ。
そうだそうだ‼︎
つか、マジで
すみれとキスしたのかよ⁈
「さっきさ、体育館出たとき、
ぶつかりそうになって、
そん時、顔近くてさー。
間近で見てドキッとしちゃった。
ずっと部活で一緒だから、
あんま意識してなかったけど、
やっぱ女のコなんだよね〜。」
「ごめんね!遅くなっちゃった。」
及川の話の途中ですみれが来た。
皆して思わずすみれの唇を見てしまう。
「…?どうしたの?
ごめん…そんなに待ってた…?」
すみれの唇を見ていた…なんて、
さすがに言えねー。
「そんな待ってねーって。」
「大丈夫だよー♡
ほら、すみれ、手繋ごうか♡」
「黙れ、クソ川。」
オレらは慌てて通常運転に戻る。
「ね、コンビニ寄っていい?」
途中のコンビニの前ですみれが言うので、
オレらは全員でコンビニに入る。
及川たちは雑誌のほうへ行ったが、
オレはなんとなく
すみれの後ろについていく。
「なにほしーの?」
「あのね、わたしの好きなキャンディの…あ!あった!
ミルク味が限定で出てるの!」
お目当てのキャンディを見つけたすみれは、
嬉しそうにニコッとしてオレを見る。
「へぇ。」
「あとで、花巻にもあげるね。」
「サンキュー!おっ‼︎」
すみれとレジへ向かおうとすると、
デザートのトコにシュークリームが
たくさん並んでいた。
「すげぇ!」
「シュークリーム?美味しそうだね。」
すみれも横に来て、一緒に見ていた。