第1章 *幽かに、愛*
「佳奈ちゃんと翔くんは、今日のところはもう帰りな。 お葬式とか、そういうことはまとまったらまた話すから」
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姉ちゃんがそう促すと、佳奈も翔さんも頷いて、翔さんが「送るよ」と言ったのを皮切りに
二人もまた、病室を後にした。
というか、俺のカラダは結構自由らしく。
簡単に病室を出ていけ、二人の帰り道についていくことも可能だった。
よかった。
翔さんと佳奈を二人きりにしたらどうなることか。
だって、翔さん確か……
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「……今日は、ゆっくり休みなね」
「あぁ……はい。 あ、翔さんも、ですよ?」
「俺は大丈夫だけど。 いや、大丈夫じゃないけどさ……しょぼくれてたらニノに怒られるからさ、きっと」
「ふふ、ですね」
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笑った佳奈に、翔さんも笑って。
二人は何だかいい感じ。
オマエ、そんなに愛想振りまいてんなよ。って、俺は訳のわからない嫉妬をして。
何もできない自分に少し苛立った。
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だって翔さん、
佳奈のこと好きなんでしょ? 俺知ってるもん。
直接言われたわけじゃないけど
翔さんの佳奈を見る目が、明らかに愛しいものを見る目で。
俺、そんな馬鹿じゃないから分かるよ。
いつか、俺が耐えられなくなって
佳奈に、翔さんには気をつけろよ。って言ったことあったけど
そんなわけないよって笑って流された。
俺の気も知らないで。 ……ったく。
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そうやって俺がぷんすかぷんすかしている内に
・
・
「ねぇ、佳奈ちゃん、……」
「はい?」
「あのさ、俺じゃ……、
ニノの代わりにならないかな?」
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・
はい、来ましたー。
やっぱり来ましたー。
ほーら、もう。 言わんこっちゃない。
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「えっと、……あの、」
・
佳奈は翔さんから視線を外して、困惑した表情をしてる。
そりゃあ、困るでしょ。
俺の代わりになるヤツなんて、どこにもいないんだから。
コイツが好きなのは、
俺しかありえないんだから。
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……と、思ったのに。
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・
「……よろしく、お願いします」
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……え?
嘘、でしょ?
…………、えーーーーーーーーー!?