第1章 ひとつ×××
ここは天国の桃源郷の一角で、とある漢方薬屋がある。
その店は 白澤という知識の神であり、中国妖怪の長の神獣が経営していた。
従業員として、桃太郎と言う亡者と兎達が仲良く、楽しく暮らしている。
この白澤とは実に性根からのスケコマシの色ボケ爺で、外見こそ若く聡明で優しげな青年では在るが、中身は惰淫を貪る獣なのである。
神獣であるがため、誰にも呵責されたりすることもなく、また、性格はさほど悪くないこともあり、あまり多くから反感を買うようなこともないため、自由に暮らしていけるのだろう。
そんな白澤には1人、どうしても好きになれない男が居た。
地獄の鬼神であり、閻魔大王の第一補佐官の鬼灯という己に似た顔つきの男だ。
顔が似ているなどと誰かに言われるたび、なんとも嫌な気持ちがモヤモヤと胸に立ち込めるのだ。
それは相手も同じようで、毎度嫌がらせや、酷い暴力を頻繁に受ける。
神獣は不死であり、そのおかげでこうしていられるが、普通の鬼や妖怪であれば今頃ここには存在できないだろう。
何故、白澤と鬼灯がいがみ合っているのかというと、実に実に…些細なことなのであるが。
「ごめんなさ~い、私、どうせ同じ顔なら真面目そうな鬼灯様がいいわ」
なんて連続で幾人もの女性にフられたことを逆恨み、閻魔庁が運営を始めた記念式典で変な嫌がらせをしたことが始まりだそうだ。
そんな2人が喧嘩を始めた理由が女人なれば、意見が同じくするのも女人である。
鬼灯には1人の想い人がいた、だがその娘は白澤を想い、白澤もその娘を心から大事に想っていた。
普段は鬼灯に負けてばかりの白澤だが、この娘を手にしたのは白澤であった。
だが女の心は秋の空色、しれっと鬼灯は娘を手に出来れば…と、虎視眈々と狙っている。
「どうですか、そろそろあのスケコマシに愛想を尽かしても良い頃合いだと思うんですけど」
「まあ、男の持病みたいなものだから。と、思うようにしています」
「少なくとも、私はああはなりませんけどね」