第2章 影に潜む悪夢
(皆の顔と名前、覚えなくっちゃなぁ…)
次々自己紹介を済ませていく部員たちの顔を見ながら必死に手帳にメモを取る南雲を、校長は柔かに笑いながら見つめている。
一通り自己紹介が終わり、今日は取り敢えず練習風景を見るという事で南雲は体育館の中のベンチに座って、ぼーっとしていた。
「…なぁ、」
不意に声が掛かり、ハッとして声のする方に顔向ける南雲を見つめていたのは、ボールを片手に汗を流している色黒の少年だった。
「あ、えーっと…青峰君…だったかな?どうしたの?」
「いや…南雲さんって、今何歳なんですか?」
唐突に振られて、しばし考えてしまった。
「え?あ、あー…一応21歳だよ?」
一応というのは、童顔故にいつも年齢とは下に見られ色々大変な人生を送ってきた南雲の口癖だ。
「へぇ…、高校生くらいだと思ってた。」
さらりとコンプレックス部分を突き刺す発言をした青峰は、そのまま練習に戻ってしまった。
(なんだよ…)
その何気ない、寧ろ素っ気ない一コマを、影の薄い一人の少年が、恨めしげに見つめていた。
「…青峰くんが……自分から……」
その少年の目は、嫉妬と強欲で濁っていた。