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君のためなら。

第4章   監禁



「煩い犬は嫌いなんですよ。」

優しい口調とは裏腹に、とても冷たくそう言うと、南雲の首枷が緩む。

「ッげは!!がっは……ッ!!ぅえ、かは……ッ!!」

一気に空気が流れ込み、嗚咽混じりに咳き込む南雲を、スピーカーの向こうの主はケタケタと笑う。

「まぁ、僕は君をどうこうしようってわけじゃあないんですよ。僕は君の躾を頼まれた犬の訓練士みたいなもんです、殺そうとか売り飛ばそうとか、そんなことは考えてないので。」

全く信じられない上に、全く安心できない。南雲は、咳き込むのを抑えながら、スピーカーの向こう側の男に問いかけた。

「ぐっ……は、あ、あんた……今……い……ぬとか、訓練士だとか……一体何の話を……」

「あっれ、伝わらなかったかな……僕はね、躾のなってない君みたいな犬を、忠犬に育て上げるプロって事だよ、ワンちゃん。」

嫌な予感がした、嫌予感しかしない。

「つまり……ぼ、くが……犬だと……?」

「Yes!!その通り。」

スピーカーから腹が立つくらい明るくそう告げると、男は一言「まぁ、よろしくね」と言って、ブツッッという音と共に、声は聞こえなくなった。

南雲は絶望的な状況に置かれていることを、信じたくはないが理解はした。つまり、あの時黒子に殴られた後、このよくわからないところに連れて行かれたということだろう。

「……気づいたら、警察とか……動くよな……」

自分を安心させようと、前向きに事を運ぶが、涙が頬を伝う。

「……助けて……くれる……よ、……な……」

冷たい地面に涙が染みて、ジュ……という音を聞きながら、南雲は、泣き続けた。疲れて眠ってしまうまで、泣き続けた。




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