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君のためなら。

第3章 誘拐


「ッ……黒子君。」

思い切って声を掛けると、黒子は立ち止まって此方を見た。
その怖いくらいの無感情の冷たい瞳が、南雲をじっと見つめている。

「……南雲さん。どうしたんですか?」

黒子は、ボールを持って此方に向かってきながら首を傾げていた。まるで、冷汗をかいている南雲を心配しているようだった。

「ぁ、いや。早いんだね、黒子君。まだ誰も来てないのに。」

「いえ、今日は僕のクラスが早く終わったので、早く来れたんです。何時もは、もう少し遅いです。」

「あ、そうなんだ?へぇ……」

「はい。」

会話が続かない、沈黙が続くと、南雲は俯いてしまった。黒子の目が見れないからだ、自分の考えていることが全て見透かされているかと思うくらい深いその瞳を見ていると、不安になり怖くなる。


「……あの、南雲さん。」

「ぇ、あ、あぁ、何?」

「シュートが上手く行かないので、教えてもらえますか?」

「あ、……」

南雲は一瞬、今朝の事を聞かれるのかと思って身構えてしまったが、黒子の一言でハッとした。

( そうだよ……黒子君だって、普通にバスケが上手くなりたいって思ってる一人の男の子だ……馬鹿か僕は。 )


「……うん、良いよ。勿論。」

南雲は心のモヤモヤが晴れて、小さく笑ってから黒子を見つめてにっこり笑って見せた。
それから20分程黒子と練習に付き合っていたが、他の部員達もやってきて、本格的に練習を始める事にした。


――――――――――

「「「おっされっしぁー!」」」

部活が終わり、全員が挨拶をして解散する。

「さってと……」

「あの、南雲さん。」

「ぅわ!?あ、黒子君……いつからそこに……。」

「さっきから居ました。」

荷物を持って帰ろうと振り返った瞬間黒子に声を掛けられ、驚いて鞄を落としてしまった。

「どうしたの?」

鞄を拾いながら黒子に問うと、此方を見上げながら一緒に帰りたいと言ってきて、南雲は驚いた。

「バスケの事で、相談したいことが……」

勿論その提案に南雲は首を縦に振る、珍しいなと思いながらも、今朝のことも聞きたいと思った南雲は、一石二鳥だと考えていた。


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