第8章 【オオカミ少女と不二王子】
シンデレラ
かぼちゃの馬車にきれいなドレス
ガラスの靴に豪華なダンスパーティー
そして迎えに来てくれる憧れの王子様
世界中の少女たちが憧れる
夢のような物語―――
【オオカミ少女と不二王子】
「璃音ちゃん~、これでいいかな?」
「小宮山、こっちは?」
「小宮山さん~、ちょっとお願い~。」
毎日めまぐるしい忙しさ。
というのも中学最後の学園祭までもう少しだから。
我が3-6は喫茶店とクラス演劇をすることになった。
そしてクラスで唯一の演劇部の私は、気が付いたら演劇の責任者をまかされていた。
演目はシンデレラ。
主役の2人がテニス部レギュラーということで、学園中(主に女子)が注目している。
そんな注目度大の責任者なんて正直気が重く、はっきり嫌だと言えない自分の性格をこんなに恨めしく思ったことはない。
それに・・・どうしてもあの人と関わらないといけない・・・
「璃音ちゃん、ちょっといいかな?」
「菊丸くんと・・・不二くん、衣装どうだった?」
「・・・うん、やっぱり僕にはちょっと大きかったよ。」
「俺はやっぱ小さくて入らなかったよん!」
主役2人の衣装の試着が終わったのでその確認に入る。
衣装は以前、演劇部で使用したのを借りることになっているんだけど、男子生徒の中では小柄なほうの不二くんには、他の男子生徒用の衣装は少し大きかったのだろう。
ましてやシンデレラ役の菊丸くんには女生徒用の衣装が小さくて入らないのは当然だ。
「やっぱりそうだよね・・・あと直しておくね。菊丸くんは・・・もう作り直さないと駄目かな・・・2人ともサイズ測らせてもらえる?」
「もちろん。」
「ほいほ~い♪」
まずは菊丸くんからね、と2人のサイズを測り始める。
でも菊丸くんは普段からじっとしているのが苦手なようで、なかなか思うように測れない。
「菊丸くん、ちょっと動かないで・・・?」
「うにゃー、俺、こういうの苦手なんだよね~」
「でも動くとちゃんと測れないよ?急ぐから、ね?」
ちぇ~、と膨れる菊丸くんをなだめ、急いでサイズを測る。
はい、おしまい!と言うと、菊丸くんは肩凝った~と背伸びをする。
その様子に菊丸くんって小さい子供みたいなんて思って自然と顔がほころぶ。