第6章 【迷い猫海堂ラン!】
走る 走れば 走るとき
あなたは何を考える?
雨にも負けず 風にも負けず
雪にも負けず 暑さにも負けず
走り続けるあなた
見続ける私
走る 走れば 走るとき
私は何を考える?
【迷い猫海堂ラン!】
「小宮山さん、今日、カラオケ行かない?」
「ごめんね?放課後はちょっと・・・」
クラスメイトの誘いに顔の前で手を合わせる。
そっかー、とその子は友達の輪に戻っていく。
だから言ったじゃ~ん、と周りの子たちが口々に言う。
クラスに馴染めない私に気を遣ってくれた彼女の優しさは嬉しい。
でも放課後はどうしても外せない用事がある。
4月からそんな誘いを断り続けてるうちに、気が付いたら浮いていた。
まぁ、みんな話しかければ話してくれるし、イジメじゃないし、私も気にしない性格だから、ま、いっかで毎日過ごしている。
窓の外を見ると沢山の生徒達が、残りの昼休みを自由に楽しんでいる。
窓際の席で良かったな~、なんて思いながら大きな欠伸をひとつついて、私はそのままウトウトと眠りに入る。
「・・・おい、起きろ!!」
その声にハッとして目を覚ます。
見ると目の前に睨みを利かせた海堂がいて、思わずひぃっと悲鳴を上げる。
その反応に明らかに彼は不機嫌な顔になる。
漫画で言えば、怒りマークが2つくらい頭に着いた感じだ。
「なんだテメェ、その反応は!!」
「あ、ごめん、ごめん。で、何の用?」
「周りをよく見てみろ」
そう言われて見回すと、目に入ったのは着替え中の男子達。
さすがに寝起きに男子生徒の生着替えは心臓に悪い。
ぬうぉっ!!と我ながら全く可愛げのない2度目の悲鳴を上げて後ろにのけ反り椅子ごと倒れる。
男子達の笑が沸き起こる中、いたたたた、と腰をさすり起き上る。
「な、なんでこんなことに?・・・って5限目体育じゃん!もうみんな着替えに行っちゃったの!?」
「テメェも早く出ていけ、迷惑だ!」
「ひぃー、海堂、起こしてくれてありがとう~!」
慌ててロッカーからジャージを取り出す。
「いやん、小宮山のエッチ~、見ないで!」
「安心せい、お前らの裸見ても全く欲情せんわ!」
「そりゃお互い様だろ~」
男子達とそんなやり取りをしながら教室を飛び出すと、私は更衣室へ慌てて走った。