第5章 【手塚ドロップ】
私の気持ちはまるで小さなテニスボール
いくら避けても拒んでも、すべてあなたのもとに引き寄せられる
そして最後は目の前にポトンと落とされ
決してあなたには届かない―――
【手塚ドロップ】
「―――以上だ。これで会議を終了する。生徒総会まであと少しだ。みんな油断せずに行こう。」
ここは放課後の生徒会室。
もうすぐ開催される生徒総会の打ち合わせが終わり、みんなそれぞれ生徒会室を後にする。
そんな中、私は会議の内容をノートに記入していた。
「ねぇねぇ、手塚君~」
「どうした?市川」
「さっきの会議のことなんだけど~」
一生懸命記入している私の前で、生徒会長の手塚くんを副会長の市川さんが呼び止める。
この2人は付き合っているという噂。
休日や放課後、2人でいたという目撃情報が後を絶たない。
「・・・!・・・小宮山!」
「え!?」
手塚くんに私の名前を呼ばれて、びっくして顔を上げた。
「どうした?考え事か?」
「え・・・?」
「ノートの字が歪んでいるようだが・・・」
「・・・あ!」
手塚くんに指摘されて自分が書いているノートを見ると、それはまるでミミズが這ったような酷い字で、私は慌ててノートの字を消しゴムで消す。
「やだ・・・ボーっとしちゃって、あはは。」
――ビリッ!!
「あっ・・・」
乱暴にこすったからか・・・ノートが破れてしまった。
あぁもう、何をやっているんだか・・・。
恥ずかしくて顔を上げれない・・・。
「クスクスッ、やだ~もう!何やってるの?小宮山さんったら~。」
「はは・・・私、これを写してから帰るから、2人とももう帰って?戸締りは私がしておくし。」
私は俯いたまま、作り笑顔で2人にそう言った。