第11章 【epilogue】
幸せそうだね・・・
「本当に騒がしくてすみません、ありがとうございました。」
最後まで礼儀正しく挨拶をして大石が彼女と帰って行く。
「それにしても英二が両思いになれて本当によかったよ。」
「秀一郎、前に告白の邪魔したらしいしね。」
「え!?そうなのかい!?」
「やっぱり気づいていなかったのね?本当、気が利くようで空気読めないから、他校で大丈夫か心配だわ。」
「ははは、俺も心配だな、キミは気が強い癖に傷つきやすいからね。」
「・・・じゃ、秀一郎がしっかり目を離さないで見てなさいよね!?」
「あぁ、もちろんそのつもりだよ。」
幸せそうだよ・・・
「それじゃ、手塚、こっちにいる間に僕とも手合わせ願えるかな?」
「あぁ、いいだろう。」
それじゃ、後で連絡するよ、と手塚にそう挑戦的な目で挨拶をし、不二が彼女と帰って行く。
「ねぇ、少し僕の家に寄っていかない?姉さんがラズベリーパイを焼いてくれているんだ。裕太も久しぶりに帰ってくるしね。」
「わぁ!由美子お姉さんのラズベリーパイ、私、大好き!」
「フフ、確かに姉さんのラズベリーパイは美味しいけれど、僕はキミの方が大好きだな。」
「もう・・・周ちゃんったら・・・」
あはははは・・・
「それでは俺達も行くか・・・」
「うん・・・」
歩き出す手塚の後に彼女が続いて歩き出す。
「ね、国光・・・、挨拶って沢山あるの?」
「ああ、次はいつ帰国するかわからないからな、お世話になった方々や親戚へも顔を出す予定だ。」
「そっか・・・じゃあ忙しい・・・よね・・・?」
「そうだな・・・それでもできる限りお前とともに時を過ごすつもりだ。かまわないか?」
「うん・・・私も・・・そうしたい・・・」
うふふふふ・・・
家路の途中、それぞれが柔らかい春風を頬に感じて夜空を見上げる。
3月の優しい星々に目を奪われ、自然と歩みを止めると、しばしその淡い光を堪能する。
傍らの温もりを感じて、皆がその幸せをかみしめる。
そっと寄り添い、それぞれの影が重なる
そんな夜だった―――