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【テニプリ】桜の木の下で

第10章 【菊丸ステップ】




「なんかいきなりごめんな・・・?巻き込んじゃって・・・」
「ううん、びっくりしたけど、でもやっぱり嬉しい・・・」


嬉しいって?って彼女に聞くと、あのね、彼女になれたって実感がね・・・?と彼女が笑う。


「それにね、私ね、そうやってみんなの中心にいて、いつも楽しそうにしている英二くんを・・・大好きになったから・・・」


彼女の口から初めて「好き」という言葉を聞けて、改めて心が満たされていくのがわかる。


風になびく髪を耳にかけながら、俺の方を振り向いてはにかむ彼女の笑顔は、春風のようにやわらかく、若葉のように初々しく、ほころび始めた花々のように甘い香りがした。


空いている手をそっとそのやわらかい頬に触れてみると、彼女はピクッと肩を震わせて、それからくすぐったそうに笑う。


そのままそのやわらかい笑顔に引き寄せられるように、彼女の唇にそっと自分のそれを重ねる。


それはほんの一瞬だけの、かすかに触れただけの、それでも確かにしっかりと交わされた


世界で一番、優しいキス―――


自分でした癖にすげー恥ずかしくて、また彼女と目が合ったら照れくさくて、でもどうしようもないほど嬉しくて幸せで・・・そしてもう一度2人で笑った。


「よーし、行くよん!みんなに紹介してやるもんね!世界一の彼女!」


そう言ってコンテナの上からバック転でくるんと飛び降りる。
体操選手のように両手を広げ、菊丸選手、10,0!と着地する。
降りる彼女に、捕まってと手を伸ばす。
ありがとう、と彼女が笑い、俺の手をとる。


木枯らしが温かい春風に変わり、中庭の桜のつぼみもだいぶ膨らみ始めた今日、俺たちが卒業したのは青春学園中等部と、それからもう一つ。


ただのクラスメートを卒業し、次のステップへと踏みだした。


きっと今までの何倍も楽しいことが待っている。
胸のワクワクがとまらない。


2人一緒ならいつだって笑っていられる。
一緒に歩んでいこう。
俺達のペースでゆっくりと。


そして踏み出された


2人のステップ―――




菊丸英二編
「菊丸ステップ」完
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