第3章 【桃城ペダル】
今日は朝から良い天気で、青い空と、もうすぐ夏って感じの真っ白い入道雲が眩しくて、今日も暑くなりそう、なんてそんな眩しい空を見上げていたら
「うわー、そ、そこの人!ど、どいてくれー!!」
―――空から男の子が降ってきた。
【桃城ペダル】
ここは校舎脇の階段で、私はその階段の下であまりにもきれいだったものだから、思わず空を見上げてぼーっといた。
あんまりにもぼーっとしていたものだから、その叫び声が聞こえても全然反応できなくて、え?って思って見てみたら、自転車と一緒に男の子が降ってきた。
すみません、降ってきた、というのは語弊があるかも。
なぜか自転車に乗ったまま階段を降りてきて、バランスを崩して制御不能になったらしい。
ぶつかる!って思って思わず目を閉じたその瞬間、ガッシャーンとものすごく大きな音がして、私はびっくりして尻餅をついてしまった。
その大きな音とその衝撃にバクバクする胸を押さえながら、そーっと目を開けてみてみると、いてててて、と自転車と一緒にその男の子が倒れていた。
「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかけてみると、彼は私の問いかけには答えずに、あっちゃー、やっちまったー、と自転車を起こしていて、それから私の方へやってきた。
「わりーわりー、大丈夫だったか?」
全然悪びれていない口調の彼に、本当は私、怒っても良かったんだと思う。
だってほぼ交通事故だよ?ましてやここは校内。
自転車対人だし、完全にあちらが加害者で、私は被害者だと思うんだよね。
でも彼があまりにも悪びれず言うものだから、私もつられて笑顔になって怒ることを忘れてしまったのだ。
「しっかしお前、どんくせーな、どんくせーよ」
はい?今なんと?
しかも2回も言いましたね?
「酷ーい!だって急に自転車が降ってくるとは思わないもの!」
今度はあの笑顔に誤魔化されません!
思わずムッとすると、そんな私に、うそうそ、本当悪かったな、と彼は手を差し出し今度は優しく笑ったので、・・・私、やっぱり誤魔化されてしまったらしい。
もういいよ、と彼の差し出した手をとり、起き上がろうとしたその瞬間・・・
いたっ!
左足に痛みが走り、私はまたしゃがみ込んでしまった。