第3章 山口忠 〜呼吸を止めて。〜
『山口くんおつかれー!』
「さんも!バイトおつかれっ!」
嶋「二人とも気をつけて帰れよー。」
ニヤニヤと笑ってこちらを見る嶋田店長に送り出されて、しまだマートを後にする。
山口くんは私と同じ烏野の一年。ここ最近バレー部OBの嶋田店長にジャンプフローターサーブ?というヤツを教わっているそうで、私がバイトしてるしまだマートにちょくちょく部活帰りに現れるようになった。
私よりも凄く背が高いから、初めはちょっと緊張したけど、いつも一生懸命練習している彼を見ているうちに、いつの間にか、バイト先で山口くんに会えるのを楽しみにしてる自分がいた。
二人でこうして並んで帰るのは何回目だろう。
横目に山口くんを見上げる。
『山口くん、部活楽しい?』
「うん!まだ俺全然下手だけど、もう少し上手くなったらもっと楽しくなるんだと思う。さんは部活入ってないんだっけ?」
『うん。でもバイトしてなかったら山口くんとも知り合えなかったし、部活しないで良かった!」
私の思い切った発言に山口くんはびっくりしてちょっとあたふたした。
大きな交差点に差し掛かり、歩行者用の信号が点滅を始める。
「あ!信号赤になっちゃう。さん、走るよ!」
そう言われて気付いたら、私は左手を彼に引かれて、走り出していた。
心臓がバクバクする。突然走ったから?
違う。山口くんの手が、手が!
思ったよりも大きくて男の子の手で、、、
私は凄く恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じる。
「良かった!セーフだね!」
ギュッと手をつないだまま笑顔を向けられると、私はもうどんな顔をしたらいいかわからなくなってしまった。