第9章 (サンジ、ロー、ゾロ、分岐、後編、一部18禁)
1、タバコの匂いだった。(サンジver)
店のドアのすぐ近くの壁に寄りかかってタバコをすっていたサンジに驚く。
「…サンジさん?」
「あ、りんちゃん。お店終わったのかい?」
紫煙をくゆらせ、ニッコリとしたサンジ。
「こんな時間までやってるんだね。レディ一人じゃ危ないから家まで送るよ」
「お客様にそんな事…」
「今は閉店後だろ?おれ個人がやりたくてやるの」
言いいながらサンジはカタリと札を『close』にしてりんを店内に押しやり、自らも入る。
ドアの内カギをみつけてしめるとりんに向き直り
「さぁ、あとは?レストランにいたから手伝えると思うよ?」
「えっ?あ、もう終わってて帰るだけでして…」
「そう。じゃあ帰ろう!着替えて着替えて」
「あ、あぁはい」
促され着替え、帰り支度を整える。
「あの、終わりましたが…」
「うん、私服も似合うね。綺麗だ」
くわえタバコのまま言うサンジにりんはなんだかくすぐったく感じた。
「またそんなお世辞ばっかり…」
「本当だって。一つ忘れ物してるけど」
その言葉にきょとんとしていると、微笑みながら近付いたサンジはりんの髪に手を伸ばす。
刺したまま忘れていたマドラーがサッと抜かれ、たっぷりとしたりんの長い髪が広がった。
「はい。やっぱり髪を流した方が素敵だよ」
マドラーを指に挟んだまま手でりんの髪をすく。
そのまま、一房すくいあげて指通りを楽しんだ。
「おれ、小さいころさ、コック以外だったら美容師になりたかったんだよ」
「そ、う、ですか…」
サンジの距離の近さにどうするべきか戸惑う。後退ると失礼になってしまう気がするし、だからと言って近付けはしないが…
パッとサンジが手を離し、マドラーを差し出す。
「さ、行こうか」
思わずマドラーを受け取ってりんは頷いた。サンジを裏口に案内する。
裏口から出てカギかけて、サンジに向き直ると月明かりに照らされた裏通りの奥を鋭い目付きで見ていた。その鋭さにやはり海賊なんだなと実感する。一緒になって奥をみるがいつもと同じで違和感はない。
「…サンジさん?」
「…ん?あぁ、送るよ。どっち?」
「こちらです」
歩いて10分ほどの自宅へ案内する。帰り道をいきながら、サンジからの料理の質問に答えた。