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【ハイキュー!!】木下久志短編集

第1章 【本当は】


このやりとりはきっちり後ろに聞こえていた。

「怖いって言われた。」
「縁下、凹むなって。一目置いてくれてるんだよ。」

凹む縁下を成田が慰めている。

「力を一発で怖いって言う奴初めてだなっ。」
「おうよ、真島恐るべし。」
「とりあえずお前らそれ以上縁下の傷口に塩どころか胡椒(こしょう)も擦り込むような真似やめろ。」

余計なことを言う西谷と田中は菅原がたしなめる。

「でもなんというか」

エースの東峰がホロリとした様子で言う。

「口は荒っぽいけど良さそうな子じゃないか、木下。」
「東峰、何か親戚のおじさんみたい。」

3年マネージャーの清水にボソリと言われ東峰が若干ショックを受けた所へ澤村が追い打ちをかけた。

「ったくこのヒゲチョコは、すぐしんみりしやがって。」

言いながらも木下と真島を見つめる澤村の目は安心した様子だった。

「なぁ、木下。」

一方、私物のバレーボールを抱え直しながら真島が言った。

「いいお仲間だな。」
「どうしたんだよ、急に。」
「何となくそう思った。」
「何だよそれ。でもそうだな、俺だってそう思ってるよ。」

一度逃げ出しまた戻った時のことを思い出しながら木下は呟く。

「いいことじゃねーか、羨ましい。」
「真島。」
「大事にしろよ。」

木下はうん、とうなづいてからふと呟く。

「あ、あのさ」
「うん。」
「今度の土曜部活休みなんだ。」
「急にどうした。」
「何だったらよ、サーブの練習一緒にするか。」

真島がまじまじと木下を見つめる。思いつくままに口にしてしまった木下はやっちまったと顔を赤くして目をそらす。

「木下がそう言ってくれるんなら」

しばらくの沈黙のあと、真島は微笑んで言った。

「お願いする。」

後ろで野郎共がおっしゃ木下やりおったとさりげなく盛り上がった。木下は真っ赤な顔をばっとあげて真島を見つめ、真島は見んなよ、おいと目をそらす。

「真島ってさ」

木下は呟いた。

「ツンデレか。」

真島は唇を尖らせて言った。

「し、知らねーよ。」
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