第3章 【慕う者】
「そうだ木下、」
縁下が言った。
「しばらくは志野のこと頼む。」
「何でだよっ。」
「何かお前に懐いてるみたいだから。それに田中や西谷止めてくれるのはいいけど本人も飛ばし気味なタイプみたいだから誰かが見てやらないとな。」
「お前がいるだろ。」
「俺が出なきゃなんない時は最終だよ。」
縁下はニッと笑う。
「頼んだぞ、木下。」
「ちょっ、おいっ。」
俺は叫んだけど縁下はにっこり笑ってスルーした。くっそー。
そうして何だか面白いことになった。
「木下先輩木下先輩。」
「2へんも呼ばなくていーって。」
「すみません。それより今週のジ×ンプどうぞっすっ。」
「お、サンキュー。あれ、でも」
「1年仲間は全員閲覧済です、2年の皆さんは山口先輩と日向先輩が閲覧済で、他の皆さんは興味がないとパスされました。」
「お、おぅ、流石だな。」
そんな話をしてたら後ろで田中達がヒソヒソと言ってる。
「おい成田よ、ありゃ何だ。」
「なんだも何も田中、志野がすっかり木下に懐いたみたいで。」
「くそ、いーな久志、子分できて。」
「西谷、子分てお前ね。」
「だってよ力、あれどー見たって。」
好き勝手言う仲間達、やれやれと思っていたら
「木下先輩、どうかされましたか。」
「いや別に。」
「そうだ、先輩。」
「何だ。」
「今度スパイクの打ち方教えてもらえませんか。俺、その、実はスパイカーの癖にあまりうまくなくて。」
「俺でいいのかよ。」
「木下先輩がいーっす。」
言い切る志野に俺はクスリと笑ってしまった。
「いいぜ。」
「あざっす。」
その後俺らが引退するまでの間俺は完全に志野のお守り役で、志野は志野で俺らがいない時に田中や西谷を止めるだけでなく、1年仲間ともうまくやってて何気にそいつらを引っ張っていってた。縁下がすごく満足そうにしていたのが今でも印象的で、俺は俺で何か変わってるこの後輩が部活やってた間はよくチョロチョロしてたけど本当言うとずっと後輩から特に嫌われる事もない代わりに特に慕われる事もないと思っていたから嬉しかったし楽しかった。
「木下先輩っ。」
「おー、どした。」
「やったっす、今度の練習試合、俺出してもらえる事になりましたっ。」
「マジか、初試合じゃねーか。頑張れよ。」
「ういっす。」
終わり