第3章 【慕う者】
大地さん達が卒業して、主将は大方の予想通り縁下になって、日向達も2年に無事進級して、バレー部は今日新入部員がどんだけ来るかなって話で盛り上がっていた。
「そろそろ俺の後釜がほしーなっ。」
まず叫んだのは西谷、確かに現2年の日向達にはリベロポジションの奴がいない。
「でも西谷の後釜って相当きついよな。」
成田が呟き、俺もうんうんと頷いてしまう。西谷は何たって中学の頃から天才で有名だったリベロだ、後から来た奴のプレッシャーを想像すると俺だってうわあってなる。
「何言ってやがる、ひたすら練習だ、練習っ。」
「まあそれもそーだろうけどよ。」
俺は呟き、今度は2年達が話に参加する。
「何かすげー奴が来るといいなっ。」
「日向、すげーってどんなの。」
「何かぐわって感じのっ。」
「日向ってさ、よく留年しなかったね。」
「月島っ、どーゆー意味だよっ。あ、影山はどー思う。」
「セッターの後釜がほしい。」
「それもすごくプレッシャーだろうなぁ。」
苦笑する山口に俺は激しく賛同したいと思う。影山も天才セッターだ、もしセッター志望の奴が来たとして耐えられるのかかなり心配になる。後はあれだなとここで主将になった縁下が口を挟んだ。
「ある程度みんなをまとめられるような奴が来てくれると嬉しいんだけど。」
「縁下、お前にしちゃ願望丸出し。」
「俺は現2年の時点で心配なんだよ。」
ため息をつく縁下に俺は慌てる。
「落ち着け、山口あたりがいるからまだ大丈夫だって。」
「それはそうだけど、とりあえず3年になっても落ち着かないあそこの馬鹿2人を抑えられる人員がもっとほしい。」
「1年にそれをさせるのは酷じゃねーか。」
なんて言っているうちに馬鹿の一人、田中が聞きつけちまったらしい。
「つか縁下、誰が馬鹿だゴルァっ。」
「お前と西谷の他に誰がいる。」
縁下に冷たく痛いところをつかれた田中がぐはあっと呻きヨロヨロと崩れ落ちるのを横目で見ながら俺はやれやれと思って着替えにかかる。
「俺も縁下に同意だな。」
成田が呟く。
「日向達もまだまだ落ち着かないし。」
「つかよ、木下はどーなんだ。」
田中に聞かれて俺は別に、と呟いた。
「そいつが頑張れるならそれでいいんじゃね。」
後で言い方まずったと思った。縁下が心配そうな顔で俺を見ていた。