第2章 【従妹とキーボード】
「木下ー、何か言ったかー。」
「田中にゃカンケーねーよ。」
「何だとっ、木下てめーっ。」
「やめろよ、お前と西谷はそれだからモテないんだよ。」
「成田っ、おめーもかっ。」
「ってか何で俺まで含めんだよっ。」
「縁下、後よろしく。」
「丸投げかよ。田中、西谷、明日の小テスト。」
「スミマセンでした。」
わあわあ言い出す2年仲間を他所に木下のスマホから着信音が響く。
「いけね、マナーモード外れてた。」
「木下、お前着信音変えたのか。」
縁下が呟く。
「まぁ、な。」
木下は言ってスマホを確認する。メールの着信、差出人は"優子"だ。画面が見えたらしき縁下がしょうがないなと言いたそうな困った笑顔をしているのを木下は見なかったふりをした。響いた着信音はあの時優子が弾いてくれた曲、響くのは優子からの着信の時だけだ。
「お前の従妹、そのうち弾いてみた動画でも投稿し出すんじゃないか。」
「あ、それは全力で止める。」
木下は呟いてメールに素早く返信し、着替えにかかる。
今日も練習頑張ろうと自然に思えた。
終わり