第5章 苦手なもの。
ドアの閉める音の後に聞こえて来た足音。
数歩だけで、誰なのか分かるくらい特徴がある。
その足音がどんどん大きくなり…
渋「あ、居った」
エナメルバッグを斜め掛けして
黒い傘を持った渋谷くんが
近付いて来ている。
傘あるやんか。
って、そんな事より
なんで図書室に来てんの。
はよ帰ろうって言うてたやん。
渋「雨なんやから、あんま歩かさんといてくれ…」
傘とバッグを床に置き
当たり前のように
隣の椅子に腰掛けて
気怠そうに片手で頬杖を付き
私へ顔を向けた。
渋谷くんの言い方やと
こっちが悪いみたいやんか。
おかしいわ、何もしてへんのに。