第5章 苦手なもの。
雨の降る音だけが聞こえる図書室。
自分だけしか居ない空間は
やっぱり居心地が良い。
時間をも忘れて
お気に入りの小説の世界に
引き摺り込まれていた。
「はぁー…幸せ」
パタンッ、と本を閉じ
読み終えた小説の世界観の余韻に浸る。
恋だの好きだのなんて事とは
無縁な私には小説の中だけが
唯一、夢を見れる場所。
今まで生きて来て
一度も男の子を好きになった事は無い。
意地悪されたり
酷い事を言われ
持ち物は取られるし…
そんな環境が続けば
関わるのも嫌になり
好きになる事も無い。
その点、小説の中の男の子は優しくて強い。
主人公を大事にするヒーローだらけ。
「……………」
私も誰かの描いた世界の主人公やったら良かったな…と本気で思ってる。