第1章 後ろの席の彼。
やっぱりあの消しゴムじゃ
ダメやったかな?
と、恐る恐る振り返れば…
渋「すまん、次も借りててえぇか?」
「えっ、あ、はい…」
消しゴムへのクレームやなくて良かった…
と、心の中で安堵のため息をつく。
渋「まだ問題解けてへんのやったら、教えたろか?」
「あ…いや…解く以前に、その、ですね…問題自体が…」
渋「は?」
ひぃぃぃっ!!
怖い、怖い、怖い!!
なんか無理!
「や、何でもありません!ごめんなさい!」
慌てて前を向く。
なんでこんな怖い人の
前の席になんかなってもうたんやろ…
最近、席替えしたばかりやから
次の席替えは夏休み明けた2学期。
今は梅雨真っ最中の
夏が、まだ少し遠くに感じる6月上旬。
この席でやってけるかな…?
と、不安になり始めていた私に…
渋「問題分からんねやったら見せたんで」
なんてありがたい言葉をかけてくれた渋谷くん。
もしかしたら彼は
見かけに寄らず良い人なのかもしれない。