第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「なによ!あの女、私のリョーマ様に!リョーマ様ファンクラブ会員でもないくせに生意気よっ!!」
「・・・朋ちゃん、さっきと言ってることが違うよ?」
きーっ!!、そう隣で悔しそうに地団駄を踏む朋ちゃんを、まぁまぁ、そうなだめながらもう一度2人に視線を送る。
一生懸命アイシングしている小宮山先輩を見つめる、リョーマくんの切なそうな目元にズキンと胸を痛ませる。
五月晴れの青空には、いつの間にか沢山の雲が流れ込んでいた。
「もう、リョーマくん、サボってないでさっさと仕事してよ!」
「はいはい・・・」
「『はい』は一回!」
6月、シトシトと朝から降り続く雨のせいで部活もお休みの放課後。
リョーマくんいるかなぁ・・・?なんて図書委員の彼を探して訪れた人気ない図書館で、本を片づける2人を見かけ、慌てて本棚の陰に身を隠した。
やだ、私、どうして隠れたんだろう・・・?
「もう、せっかく部活休みになったっていうのに、サボってばっかで1人居残りだなんて・・・」
「本当、酷いよね、ちょっと居眠りしたくらいでさ。」
する方が悪い!そう小宮山先輩は抱えた本の束から一冊手にとると、それでポンッとリョーマくんの頭を軽く叩いて、それから棚に本を戻していく。
リョーマくんはその叩かれた頭を軽く撫でると、ちぇー、そう唇をとがらせた。
「ほら、リョーマくん、ふてくされてないで、速く済ませちゃおう?」
この後、オートテニス場に行きたいんでしょ?、そうテキパキと仕事をこなしながら、小宮山先輩はリョーマくんに笑顔を向ける。
そんな先輩に、リョーマくんは少し頬を染めて、・・・一緒に来る?、そう問いかけた。
少しためて言ったその言葉にキューっと胸が締め付けられる。
小宮山先輩・・・普段、越前くんって呼んでいるのに・・・
そうリョーマくんに笑顔で頷く小宮山先輩の嬉しそうな顔に慌てて目を伏せた。