第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「ほら、その本、ここでしょ?貸して?」
リョーマくんが背伸びして棚に本を戻そうとしていると、小宮山先輩がそう言って彼に手を差し出す。
「・・・いーよ、別に。」
「だってリョーマくん、届かないじゃない。」
「いいってば。」
リョーマくんは小宮山先輩の手を無視すると、少しムッとした顔をして、辺りを見回し踏み台を持ってきて本を棚に戻す。
「・・・本当、素直じゃないんだから。」
男がカッコ悪い、なんて思ってるの?、そう呆れ気味に顔上げた小宮山先輩が目をパチクリさせて、それから、・・・なんか新鮮、そう呟く。
あ・・・、リョーマくんが踏み台に上ったから、目線がいつもと逆なんだ・・・
踏み台を使って隣り合わせに立ち、見つめ合う2人をじっと見つめる。
どうして・・・?見ていたくなんかないのに、なんでか目が離せないよ・・・
2人の周りだけ、まるで時間が止まったかのように感じた。
「背なんか直ぐ伸びるし・・・」
「うん、毎日牛乳2本、飲んでるもんね・・・」
「そしたら、いくらでもオレが手、貸してやるし・・・」
「じゃあ、楽しみにしてる・・・」
リョーマくんの手が小宮山先輩の頬に触れて、それからそっと指でくすぐる。
先輩の手がリョーマくんに添えられ、ワイシャツの裾をギュッと握りしめる。
「・・・上からあんたにキスすることだってできる。」
「・・・う、ん。」
ゆっくりと2人の距離が近づいて、それからそっと重なり合った____
シトシトと朝から降り続いていた雨はいつの間にか土砂降りになっていて、私の身体を濡らし心の中までも浸透していく。
ううん、本当はずっと気づいていた・・・
気が付かない振りをして、現実から目をそらしていた・・・